芝浦工業大学名誉教授 本橋健司

 

2020年、12月にしては温暖な日に、多摩防水技研株式会社(TAMABOU)の本社、工場、実験スペースを見学しました。草場社長とは浴室改修に関連して知り合いましたが、今の場所(八王子市楢原町)に移転する以前のことでした。浴室改修プロジェクトの中で草場社長から「八王子に移転して、設備も整ってきたので、是非見学に来てください。」と言われていました。それが、あれやこれやで、今になってしまいました。見学を終えてから数日後に草場社長からメールをいただきました。「見学者の感想文コーナー」を作るので、感想文をお願いしたいとのことでした。それで、この文章を書いたというわけです。
技術開発に係る意見交換もあったので、1日をかけて見学と意見交換を行いました。一言で言えば、有意義で楽しい見学でした。以下、感じたことを羅列して感想文とします。

①現場の技術、現場からのニーズに精通している。
技術開発で大切なことの一つは、技術が現場のニーズに対応していることです。私は、大学や研究所で建築材料の研究をしていました。その関係から、大企業の研究者から高性能・新機能を有する材料が持ち込まれます。「素晴らしい材料なので、建築分野で応用できないでしょうか?」というのが彼らの質問です。「帯に短し、たすきに長し」というものが多いです。時折、「材料を開発してから応用できるかどうかを聞きに来ないで、どういう材料を欲しいのかというニーズを聞いてから材料を開発してほしい。」というように嫌味を言います。
TAMABOUの場合、ニーズとの乖離はありません。草場社長自らが職人です。浴室改修ではリムシートとリムシール&ボンドで1日改修工法を可能としています。施主のニーズ、施工現場での職人のニーズを把握し、そこを起点として技術を開発し、提案しています。現場をよく知り、問題解決型の提案が可能となっています。

②シーズ技術にも精通している。
①で述べたニーズ把握と同時に、材料そのものの技術開発にも精通しています。リムシート、リムクイック、湿潤面用速硬化型プライマー、リムシール&ボンド等々の材料は、TAMABOUの技術で製造されます。TAMABOUが主導的立場で、委託先の材料メーカーと協力して目的に合致する材料を開発しています。販売されるものを単純に購入するということではありません。リムシートやリムクイックのベースとなるウレア樹脂の話を始めると、草場社長は話が止まらなくなります。

③ネットワーク
TAMABOUは地元のイノベーション多摩支援事業(イノタマ)への参加をはじめとし、東京都からの経営革新計画の承認、建築建材展や建築再生展への展示、認定NPOの活動等を通じて幅広いネットワークを構築しています。また、いわゆるゼネコンとの協力・連携に長期実績があり、「困ったときは、TAMABOUに相談」という技術的信用を確立しています。今後の企業発展のポイントの一つがネットワークにあることは明らかです。ネットワークの中で情報交換をし、協力し、技術を発展させ、技術を普及することが重要です。
以上、3つの観点からTAMABOUへの感想を述べました。TAMABOUの施設全体が工場であり、研究所であり、実験スペースとなっています。上記で紹介した技術以外にも、外壁剥落防止工法、遮熱塗料、リムシートを応用した各種部材、外壁断熱+防火+防水技術等々、開発途中の技術も含めると枚挙にいとまがありません。

最後に、あまり褒めてばかりではいけないので、一つ注意点を挙げておきます。それは、TAMABOUにはアイデアが豊富すぎるということです。良いことですが、前線を拡大するにはバランスが必要です。リムシート、リムクイックの基礎であるウレア樹脂応用技術を中核として(コアコンピタンス)、多面的であっても、バランスよい企業発展を目指してください。コロナ禍の今は、技術の拡大・普及が簡単ではありません。しかし、コロナ禍を乗り越えて、技術が開花し(していると思います)、結実することを期待しています。

多摩防水技研株式会社
〒193-0803 東京都八王子市楢原町1457-1
TEL:042-686-1061(代)
FAX:042-686-1062

Copyright© 多摩防水技研株式会社 All Rights Reserved.